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接骨院の仕事と矜持(きょうじ)
昨夜22時、整体の患者さんが終わり、夕飯を食べようとしたその時
インターホンが鳴った
「妻が転んで手がおかしいのですが」
(これは折れてるな)
こんな雨の日はそんなこともあるだろうな、とは思っていた
すぐに院内に招き入れたが、奥さんの手は素人が見ても骨折とわかるくらいに変形していた
患者さんに骨折の疑いがあること、整復(骨を元に戻す)と固定の必要があることを説明し、道具を揃えてから整復にかかる
こういうとき女性は非常に強い
男ならギャーギャー騒いで、泣き叫んで、術者を蹴ろうとする人もいるくらいだ
しかしこの患者さんは黙って我慢していた
折れたところを引っ張られて痛くないわけがない
でも声を漏らすこともなかった
女性は強い
患者さんが細身だったことと、ケガしてすぐだったことで、整復・固定は非常にスムーズに行うことができた
整復と固定さえしっかりしてしまえば痛みはだいぶ楽になる
注意事項と翌日病院にかかるように説明して帰宅してもらった
帰り際の夫婦のホッとした顔を見て、僕もホッとして部屋に戻った
冷めてカチカチになったグラタンも、なぜかいつもより美味しく感じた
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接骨院の仕事、柔道整復師の仕事で特に特徴的なのは、この骨折と脱臼の整復・固定でしょう
普段は首や腰の痛い人を相手に施術することが多いですが
正直なところこれは整体師でも、理学療法士でも、鍼灸師でも、アマチュアの揉み屋さんでもできます
でも骨折・脱臼の整復・固定は、医師を除いて柔道整復師以外ではできない仕事です
もし僕が柔道整復師じゃなかったら、ここで接骨院をやっていなかったら
この患者さんは朝まで痛みと不安に悩まされていたかもしれません
もちろん普段の施術も痛みや不安を取り除いてるという意味では同じですが
骨折・脱臼の整復・固定こそが、接骨院が接骨院としてあるための矜持・プライドなんだと思います
最近では”骨のつげないほねつぎ”なんて言われちゃう接骨院もあるみたいですし
自費に移行して外傷は一切見ない!なんて柔道整復師もいるらしい
それは接骨院として、柔道整復師としてどうなのかなーと思ってしまうわけです
接骨院の仕事なんて各方面から嫌われるばっかりで、いいところなんて見てくれない
それを不満に思うこともありますが
自分の施術で喜んでくれる患者さんがいる限り
接骨院として、柔道整復師として、いつまでも自分の仕事に誇りを持っていたいと思った夜でした